"Slow Magnetic Relaxation Triggered by a Structural Phase Transition in Long-Chain Alkylated Cobalt(II) Single-Ion Magnets"
コバルト(II)錯体は、熱や光などの外場刺激によって高スピン状態(HS)と低スピン状態(LS)を可逆的に変換することが可能なスピンクロスオーバー(SCO)現象や、遅い磁気緩和現象を示す単分子磁石(SMM)特性などの特異的な興味深い磁気特性を示すことが知られています。通常、SMM特性を示すためにはHS状態に起因した高い磁気異方性が必要となりますが、SCO現象を示す六配位八面体型単核コバルト(II)錯体は低温でLS状態を示すため、これら二つの磁気挙動は共存しえないものとなっています。しかしながら、本研究では低温におけるHS状態から高温におけるLS状態へと通常とは逆のスピン転移を起こす “逆スピン転移” 現象を示す、長アルキル鎖を導入した単核コバルト(II)錯体を用いることによって、低温領域におけるHS状態を実現し、スピン転移挙動とSMM特性の共存を初めて達成しました。さらに、固体NMR測定から逆スピン転移現象がアルキル鎖のアンチーゴーシュ間のコンフォメーション変化に起因していることを明らかにし、アルキル鎖がまっすぐに配列したアンチ型においては、アルキル鎖間の分子間相互作用により中心コバルト(II)イオンの配位構造を歪ませ、高い磁気異方性を獲得していることを明らかにしました。これらの知見は、コバルト(II)錯体が示す特異的な磁気挙動の解明や、新たな機能性材料を得るための設計指針として極めて有用となります。
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“Slow Magnetic Relaxation Triggered by a Structural Phase Transition in Long-Chain Alkylated Cobalt(II) Single-Ion Magnets”
Fumiya Kobayashi, Ryo Ohtani, Masaaki Nakamura, Leonard F. Lindoy, Shinya Hayami*
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