“Water Molecule-Induced Reversible Magnetic Switching in a Bis-Terpyridine Cobalt(II) Complex Exhibiting Coexistence of Spin Crossover and Orbital Transition Behaviors”
スピンクロスオーバー(SCO)現象を示す金属錯体においては、溶媒分子やガス分子などといったゲスト分子の吸脱着に伴った可逆的なスピン状態変換を示すものが報告されています。しかしながら、このような報告例のほとんどは、MOFやPCPなどといった多孔性配位高分子で達成されており、単結晶ー単結晶(SCSC)構造相転移を伴ったゲスト分子による可逆的なスピン状態変換を示す単核金属錯体の報告例は極めて限られています。本研究では、極めてシンプルな単核ビスターピリジンコバルト(II)錯体における、水分子の吸脱着による可逆的なスピン状態変換と、スピン状態変化に起因した単分子磁石(SMM)特性の可逆的なスイッチングを達成しました。さらに、この錯体の脱水体は、通常の磁気ヒステリシスと逆の磁気ヒステリシスが共存した極めて珍しいクロスループ型の磁気ヒステリシス挙動(クロスループヒステリシスと命名)を示し、これらの磁気挙動が協同的なSCO現象と、カウンターアニオンのオーダー/ディスオーダー相転移によって誘発されたコバルト(II)イオン周りの対称性の変化に起因した軌道角運動量Lの変化(Orbital Transition; LTと命名)にそれぞれ起因していることを明らかにしました。この錯体が示す、ゲスト分子によるSMM特性のスイッチングおよびクロスループヒステリシス挙動はそれぞれ世界で二例目の報告例であり、単結晶X線構造解析によってその起源を明らかにした初めての報告例になります。これらの結果は、コバルト(II)錯体がごく稀に示す逆スピン転移(rST)現象やLT現象などの特異的な磁気特性を解明するための極めて重要な知見となります。この研究内容に関する論文は、Inorg. Chem. の Supplementary Journal Cover に採用されました!
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“Water Molecule-Induced Reversible Magnetic Switching in a Bis-Terpyridine Cobalt(II) Complex Exhibiting Coexistence of Spin Crossover and Orbital Transition Behaviors”
Fumiya Kobayashi, Yuki Komatsumaru, Ryohei Akiyoshi, Masaaki Nakamura, Yingjie Zhang, Leonard F. Lindoy, Shinya Hayami*
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